2019年4月後半の化学事故・・・今回は多様な化学事故が発生
RISCAD(産業技術総合研究所が提供する事故データベース)のポータルサイト「さんぽのひろば」(https://sanpo.aist-riss.jp/sanponews/)との連携により提供された情報を中心に、火災や爆発の事例を紹介する。
また、過去の事故の教訓について、センター研究員の経験からの(ひとこと)も紹介する。
4月15日「製薬工場での改修工事中の火災」中国山東省
山東省済南市の製薬工場の凍結乾燥工場の地下の配管工事の溶接作業中に、溶接火花で冷媒に着火した可能性。社員10名が窒息死し、消防士12名が軽傷を負った。なお、同社では過去4年間に爆発・火災事故3件が起きている。15年4月には工場4階の作業場で反応釜が爆発・炎上。16年8月には工場5階のダクトから出火した。16年10月にもアルコールを含む圧力容器が爆発する事故が起きていた。
(ひとこと)フロンの製造禁止に伴い、一部ではノンフロン自然冷媒と称するプロパンなどハイドロカーボンを成分とした冷媒が提案されているが、漏洩時の火災爆発リスクが極めて高い。一方代替フロンと称される微燃性のHFC(ハイドロフルオロカーボン)については、地球環境負荷や火災リスクに関する検討も行われている。
4月16日「埠頭の倉庫会社でベルトコンベアから火災」神奈川
神奈川県川崎市の埠頭からバイオマス燃料である木質ペレットややしがらを倉庫に搬入するベルトコンベアで火災が発生し、燃料倉庫に延焼し、鎮火に10日間を要した。そのため、周辺に悪臭が蔓延した。
(ひとこと)木質ペレット等は脂質を含むため、堆積状態によっては蓄熱火災に危険性がある。
4月17日「アクリル樹脂工場の反応器への飼料供給中の爆発」和歌山
和歌山市の化学工場の、液晶パネル用のアクリル樹脂原料の製造中に、反応釜にアルコール粉末を投入中に爆発が起きた。従業員1名が顔などにやけどを負った。会社の調査によると、メタクリル酸メチルの小分け作業中に静電気が発生し、引火したもので、静電気対策不備による火災であった。
(ひとこと)同工場では2018年9月にも同じ場所、同じ作業中に火災が発生し、1名が火傷で病院に搬送されている。化学工場では反応器への粉体の仕込みや反応器からの可燃性溶剤の排出時に火災となる例が多く、着火原因の大部分は静電気火花とみられている。
4月18日「研磨材・工具製造工場での火災」中国上海
本工場の主要製品は研磨材や工具等であるが、包装材料や接着テープも製造していることから工場内に可燃物が多く、火の勢いが大きかった。この火災で2人が死亡、6人が負傷した。
4月18日「アルミ鍛造工場で火災」大阪
工場ではアルミの鋳造作業中で従業員10人がいたが無事だった。溶けたアルミを鋳型に流し込んだ際、排気ダクト付近に火の粉が飛んでおり、天井に設置されている排気ダクト周辺が燃えた。
4月19日「リサイクル工場でスクラップ材の火災」埼玉
工場内で車体の溶断中に出火し、敷地内に積まれていたスクラップ材や廃車両に延焼した。従業員1名が軽い火傷を負った。
4月22日「電気自動車製造工場での火災」中国上海
電気自動車メーカーの工場で火災が発生した。工場が作成した事故報告によると、原因はバッテリー筺体と冷却プレートの過去の衝撃による変形の結果、短絡が生じ発火に至ったと結論付けている。一方、詳細な情報や写真が開示されないことから、専門家から疑義の声が出ている。
4月22日「金属塗装工場で火災」広島
塗料に空気を吹き掛けてほぐす「エアブロー」作業中に塗料に着火して火災となり、壁の一部や機械を焼き、作業中の従業員が手に軽い火傷を負った。
4月24日「工場作業場での爆発」中国内モンゴル自治区
ポリ塩化ビニール製造工場の作業中に爆発が起き、3人が死亡し、5人が病院に搬送され、工場周辺の住民が避難した。爆発後の火災で工場周辺も類焼したが、隣接している球形タンクへの延焼は食い止められた。また、周辺地域の大気ならびに土壌の汚染はみられていない。
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