海外との連携
フランス・産業安全文化研究所(ICSI)との連携
保安力向上センターではフランスの産業安全文化研究所(Institut pour une culture de la sécurité industrielle)と、保安力評価や経営層を含めた安全教育に関する連携を進めることにしています。
複数回お互いの事務所を訪問し、意見交換を行っており、2018年9月27日に開催された産業安全シンポジウム(化学工業日報社との共催)では、ビデオレターでの挨拶を頂いた。
2019年9月にはICSIのDr.Ivan Boissieres (Director General 専務理事)、Dr.Dounia TAZI ( Director of Operation 常務理事)が来日され、センター幹部、保安力評価推進委員との意見交換を行った。
産業安全文化研究所について
産業安全文化研究所(ICSI)は、2001年9月にToulouseで発生したAZF社肥料工場の大爆発(31名死亡、2500名以上の負傷)を契機に、単なる規制の強化ではなく政府(中央政府・地方政府)、企業・産業、市民・NPO・NGO、大学、労働組合など様々なステークホルダーが協力し、安全について研究及び実践を行う場として2003年に設立された研究所である。2005年には産業安全文化財団(Foundation pour pour une culture de la sécurité industrielle:FonCSI)を併せて設立し、長期の研究プロジェクト、後期博士課程学生の教育をFonCSI、企業向けプログラムの開発・提供、修士向け教育の提供をICSIが行う体制となっている。現状、常勤職員23名及び活動に深くコミットしているシニアエキスパート(企業や公的機関を引退した後ICSIの活動に関わっている方々)7名及び多数の外部協力者を抱えており、過去10年間で急速に成長をしている組織である。
2003年に設立された当初は、独立性を担保するために、国の補助金は入れず会員企業及び団体の会費及び学費やサービスに対するフィーで運営を行っていた。2013年9月に2代目会長としてAndre Claude Lacoste氏(前フランス原子力安全庁長官)を迎えてからは、過去10年間の活動を通じて、ICSIの独立性が担保できることが会員企業・団体からも信認を得たことから、中央政府との情報交換及び対話にも積極的に取り組む方向となっている。なお、自治体関係者は設立当初から州政府、市政府がメンバーとして入っている。
最近の特筆すべき活動として、大学院教育及びトレーニングがある。
大学院教育では、5つの大学と連携して、”Risk Management”, ”Risk Engineering”(英語コース), “Human and Organizational Management” (企業幹部・幹部候補生向けコース), “Safety in Health and Medicine”(医療関係者向けコース)、4つの修士課程を設置している。2005年の設立以降300名近い修了生を輩出している。特色としてはそれぞれのコースで8ヶ月ほどは企業内の安全に関するプロジェクトにICSIの専門家及び企業の担当者の指導の下従事することである。近年では、各コース間で共通の講義を設けることにより、例えば医療関係者と産業関係者を講義内で交流させ、共同して授業課題に取り組むなどの機会を増やしているとのことである。また、南アメリカ向けにはUniversity of San Andreasと連携し、スペイン語のE-learningコースの開発を行っている。
企業向けトレーニングについてはリヨンにトレーニングセンターを設置し、2004年以降延べ1万人以上に対してトレーニングを提供している。トレーニングは、トレーニングセンターで実施する公開型の集合教育と、各企業へ講師を派遣して行うクローズドなものに分けられている。最近では、幹部向け教育にも力を入れており、執行役員クラス向けのピア・コーチングを含んだトレーニング、部長クラス向けの集合教育などにも取り組んでいる。