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最新!化学事故情報

2019年4月前半の化学事故・・米国の化学プラントでの事故が続いている

RISCAD(産業技術総合研究所が提供する事故データベース)のポータルサイト「さんぽのひろば」(https://sanpo.aist-riss.jp/sanponews/)との連携により提供された情報を中心に、火災や爆発の事例を紹介する。 また、過去の事故の教訓について,センター研究員の経験からの(ひとこと)も紹介する。

4月1日「光ファイバー工場で火災」福岡県
亀山市の光ファイバー製造施設での火災で排ガス処理装置の一部が焼損した。光ファイバー合成工程の排ガス処理装置のヒータが過熱して発火したものと推定されている。
(ひとこと)最近ではケーブル火災を想定して、光ファイバーの外部被覆材に難燃性樹脂を使用する製品も発売されている。

4月2日「化学工場での爆発火災」米国テキサス州
不凍液やブレーキオイルの添加剤などを製造するテキサス州の化学工場で爆発火災が発生した。何かの原因で化学薬品の輸送配管から出火して、タンク内のイソブチレンに着火し、エタノールやエチルアセチレンなどを保管する倉庫に延焼した。作業員1名が死亡、1名が重体となり、少なくとも10人(うち5人は社員)が負傷した。周辺の学校では生徒らを屋内に避難させたとのことである。
会社の役員は火災前にイソブチレンに接続している高圧配管のチェッキ弁の漏洩を認識していたとの証言もある。
また、同社は以前から環境や安全違反があったことがと指摘されている。
CSB(米国Chemical Safety and Investigation Board)とOSHA(米国Occupational Safety and Health Agency)が事故の原因調査を行うことになるという。
米国では、この3週間で3件の化学火災が発生している。3月17日にはDeer Park のIntercontinental Terminals Coの化学品貯蔵エリアの火災でジェット火炎が噴出し黒煙も上がった。この火災では数千バレルの化学物質が放散された。
3月15日にはExxon Mobil’s Baytown製油所で小火災が発生したが、短時間で消火した。

4月4日「ごみ処理施設の不燃ごみピットで火災」長野県
長野市内のゴミ処理施設の不燃ゴミピットで火災が発生した。廃棄物の内部で火がくすぶり放水が届きにくかったことが影響して鎮火には約78時間を要した。本来は別に回収されるはずのスプレー缶やリチウム電池などがピット内の不燃廃棄物に混入しており、着火原因となった可能性がある。
建屋を除く機械設備の復旧費は約2億8千万円で、保険還付を除いた約2億円を市が負担するという。また、復旧にも時間を要し、ゴミの受入再開は7月以降になるという。
(ひとこと)一般廃棄物の収集や処理工程ではスプレー缶に起因する火災が多いことが知られているが、最近ではリチウム電池(ボタン電池)の発火による火災が増加傾向にある。廃棄物処理施設の火災は自治体の負担増になると同時に、廃棄物の受入停止によって市民や事業者にも大きな影響が出ることが多い。排出者の規程遵守も大切である。

4月6日「造船所の溶接作業中の火災」兵庫県
兵庫県南あわじ市の造船所で火災が発生し、資材など約400平方メートルを焼損し、強風の影響で付近の山林に延焼した。鉄板などの溶接作業の火が近くに積まれた資材に火が燃え移った。

4月7日「製油所のナフサプラントの爆発、火災」台湾
台湾雲林県の製油所のナフサプラントで爆発が発生した。爆発は複数回起き、約2km離れた建物のガラスが破損した。周辺の市民約10,000名以上が避難した。液化石油ガスのパイプラインが破損し、漏洩したガスに着火した可能性が指摘されている。生産設備には影響がなかったが、大気汚染規制違反により500万台湾ドルの罰金を課された。

4月7日「製紙工場の電気室での火災」愛知県
愛知県春日井市の製紙工場の排水処理設備の電気室で火災が発生して、電気室を全焼した。電気設備の不具合が原因の可能性。工場では印刷用紙やティシュなどを製造していたが、一部の生産が停止し、5月以降順次再開予定。

4月8日「風力発電所の風車で火災」北海道
北海道根室市の風車から出火し、羽根の付け根の発電機を収めた部分を全焼したほか、移り周囲の草地に延焼した。
(ひとこと)風力発電の普及に伴い火災も発生している。原因は落雷による過電流や過電圧が最も多いが、機器の腐食や漏油など保守管理の不足によるものも少なくない。このような状況に対応して、火災検知や自動昇華装置の開発も進んでいる。
【参考文献】「風力発電設備の火災事故と消火装置」,足立慎一,損保ジャパン日本興亜RMレポート,No139 (2015)

4月9日「研究所の研究坑道での火災」北海道
北海道の放射性廃棄物地層処分関連研究所の研究坑道(地下約250mの連節部)で火災が発生した。地下約350mで点検中の作業員が、端子盤からの出火を確認して消火器で消しとめた。立坑用の昇降装置用の端子盤と電気ケーブルが焼けた。

4月13日「廃棄物処理工場での廃プラスチック火災」東京
東京都足立区の廃プラスチックリサイクル工場で火災が発生し、建屋など3棟を焼損した。プラスチックに火がついた状態でベルトコンベヤーから搬送されてきたとの証言。

4月15日「製薬工場での改修工事中の火災」中国山東省
山東省済南市の製薬工場の凍結乾燥工場の地下の配管工事の溶接作業中に、溶接火花で冷媒に着火した可能性。社員10名が窒息死し、消防士12名が軽傷を負った。

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