post_type:post/single.php

コラム(私の一言)

スマート保安のアジア支援と保安力評価(若倉正英/保安力向上センター)

保安力向上センター
若倉 正英

 経済産業省は6月にタイ工業省と「スマート保安に関する協力の覚書」を締結し、11月には中国で「スマート保安日中協力セミナー」を開催した。タイ側は日本のデジタル技術を活用したプラント保安技術に、中国は多発するプラント事故に対応するため法規制も含めた日本の保安ノウハウに注目しており、経済産業省は両国との意見交換に基づいて、民間ベースでの交流も支援する方針で、産業インフラにおけるシステムの支援を考慮している。
 タイ工業省と締結した協力覚書では、産業保安に関するデータ取得および分析などに関する技術支援、法規制などの将来的な改善支援、スマート保安分野の人材育成等を支援する。
 中国では2015年の天津の化学工場での爆発事故後も産業分野での火災、爆発、有害物の漏洩事故が続発しており、中国政府は産業保安に関する抜本的対応の一環として、従来の産業安全、自然災害、消防などを管轄する組織を統合して応急管理部(日本では省にあたる)を新設した。経産省は応急管理部との連携により、IoT技術支援との両輪で安全文化を同国に根付かせたいとしている。
 保安力向上センターは経済産業省の取り組みに協力して、昨年、北京、天津を訪問して、行政機関や産業団体、石油/石化企業を対象に安全文化と保安力評価を紹介した。
 2019年1月にはアセアン各国政府の化学産業部門幹部や化学産業の役員を対象にした、保安人材育成研修で「産業における安全文化と保安力評価」に関する講習を行った。また、2月にはタイに対する技術者研修で、安全文化に関する講義を行う予定である。
これらの講義を契機として、日本政府や産業界と連携して、保安力の簡易評価手法の開発などとあわせて、安全文化の醸成に関する支援を検討する予定である。

保安力向上センター