2019年3月後半の化学事故・・・中国の化学工場で大爆発
RISCAD(産業技術総合研究所が提供する事故データベース)のポータルサイト「さんぽのひろば」(https://sanpo.aist-riss.jp/sanponews/)との連携により提供された情報を中心に、火災や爆発の事例を紹介する。
また、過去の事故の教訓について、センター研究員の経験からの(ひとこと)も紹介する。
3月15日「電子部品工場で火災」岐阜県
輪之内町里の電子部品製造工場の、自動車のハンドル周りの電子部品製造工程から出火。従業員2人が火傷を負い、工場1000平方メートルを焼損した。出火当時、工場の2階では部品生産用の器具を可燃性の液体で洗浄していた。
3月16日「接着剤塗布ラインの点検、清掃中の火災」岡山県
倉敷市のゴム製品製造工場の接着剤塗布ラインの点検、清掃中に火災が発生し、天井と設備の一部を焼損し、4時間後に鎮火した。また、設備に付帯するダクトを通して黒煙が外部に排出された。
3月17日「石油化学の化学物質タンクで大規模火災」米テキサス州
米国テキサス州の日系化学工場のタンクで火災が発生した。火災により内容物のベンゼンが漏洩して、住民ら約700名が吐気や頭痛を訴え、15名が一時呼吸困難となった。火災により、ヒューストンとメキシコ湾をつなぐ水路に有害物質が流出し、地元検察は水質汚染に関する5件の環境犯罪で同社を刑事訴追した。
また、この火災に対してテキサス州とハリス郡が被害対応費用の補償などを求めて、同社を提訴している。
3月21日「中国化学工場での爆発火災」中国江蘇省
中国江蘇省塩城市の化学工場で大規模な爆発と火災が起き、78人が死亡し、28人が行方不明、負傷者は計640人と報道されている。約30人が重体で、58人が重傷を負った。爆風により広い範囲で学校や住居の窓ガラスが割れるなどしたほか、現場には大きな爆発孔(漏斗孔)が生成した。
原因はプラントから漏れた天然ガスがニトロベンゼン製造装置周辺で爆発し、それがメタノールとベンゼンの貯蔵タンクの燃焼爆発を引き起こしたとみられる。
江蘇省では生態環境庁や緊急対応管理庁が安全や環境の点検や取締りを緊急実施し、中期的には環境・安全で問題の多い工場を追い出す方針を出しており、この動きは中国全土に波及しはじめている。中国事情に詳しいコンサルタントは、製造時のリスクが大きい製品では工場の停止される可能性もあり、サプライチェーンの問題も生じると指摘する。
(ひとこと)事故の写真によると、硝酸アンモニウムなどの爆発で生成する、漏斗孔と呼ばれる穴があいているように見える。穴の開いた場所は固体廃棄物置き場との説明があり、何らかの爆発性物質が置かれていた可能性もある。
3月30日「リサイクル施設の火災」北海道
午後8時半頃、札幌市のリサイクル会社の倉庫で火災が発生し、3時間後に消し止められたが、従業員が煙を吸って病院に搬送された。午後7時ごろ発砲スチロールを溶かすなどの作業をしていた従業員が最後に倉庫を出たという。
3月31日「廃棄物コンテナで爆発」中国江蘇省
江蘇省昆山市の精密金属加工工場の金属廃棄物を保管していた、屋外のコンテナで爆発が起き、近くの工場に延焼した。7名が死亡し、1名が重傷、4名が軽傷を負った。この工場は台湾の企業が運営し、アルミニウム合金など軽金属の加工を行っており、江蘇省からハイテク企業の認定を受けていた。
(ひとこと)香港のメディアによると、昆山市では14年にも金属加工場でアルミニウムの粉塵が爆発して、97人が死亡、163人が死亡する事故が起きていたとのことである。
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