2025年8月の化学火災(三フッ化窒素の火災 硫化水素で救助者が死亡)
災害情報センターのデータベース(http://www.adic.waseda.ac.jp/rise/ )ならびに、RISCAD(産業技術総合研究所が提供する事故データベース)のポータルサイト「さんぽのひろば」(hanpo.aist-riss.jp/sanponews/)の情報も参照し、海外の気になる事故を含めて、
産業分野の火災や爆発、漏洩などの事例を紹介する。
8月29日「炭素製品工場の黒鉛化炉で火災」富山県
富山県富山市の炭素製品製造工場の黒鉛化炉で火災が起きた。高温の炉に放水すると水蒸気爆発が起きる可能性があり、炉の温度が下がるのを待ったため、消火に57時間を要した。出火時同工場内には従業員97名がいたが、けが人はなかった。工場では工業用の電極などを製造しており、同社では火災原因について以下の説明をしている。
「黒鉛化処理の過程で、炉内に発生したガスが高温により急激に圧力上昇し、その影響で高温の炭素粒子が炉外へ急速に噴出したと考えられるが、ガス発生の原因は現在も調査中でである。次に、圧力上昇に伴う衝撃により、建物の屋根や窓ガラスが破損し、極めて高温のため発光した炭素粒子が屋根から噴出した。当該噴出した炭素粒子は、高温のため酸化により消滅、あるいは空気中で冷却され煙のように見えた後、地上に降下した。また、建物内に飛散した高温の炭素粒子が、建物内の可燃物を燃焼さた。」以下を参照されたい。
topic_20251014_jp.pdf
8月26日「光学機器製造工場で爆発」埼玉県
埼玉県所沢市の光学機器製造工場で爆発があり2人が負傷し、隣接する住宅に延焼した。火災後、ホームページ上でしばらく休業する旨の報告がされている。
8月21日「一般廃棄物処理施設のコンベア火災 リチウムイオン電池の可能性」山梨県
山梨県富士吉田市の廃棄物処理施設のコンベアから火災が発生した。混入したリチウムイオン電池が発火した可能性がある。
8月15日「火薬工場で火災、爆発 25人が死亡」ロシア
ロシアリャザン州レスノイの火薬類製造工場で火災、爆発が起きた。少なくとも25名が死亡し、158名が負傷した。工場の作業場内で火災が起き、爆発に至った可能性があるが、火災の原因は不明。
8月15日「リサイクルセンターの火災」山梨県
山梨県八雲町のリサイクルセンター不燃・粗大ごみ処理ラインの破砕物選別コンベアから火災が発生した。破砕機で破砕された高温または発熱したごみが、破砕機からコンベアに運ばれ、ゴム製のコンベアベルトに着火、延焼したもの。なお、発火源となりえるごみの残渣物は確認されていないことから発火源は不明となっている。
火災により破砕・搬送・選別・集じん設備に被害を受けており、稼働再開には相当の時間を要する見込み。
8月11日「コークス工場で保守作業中に爆発 2名が死亡」米国
米国ペンシルベニア州の鉄鋼会社のコークス工場で爆発が起きた。従業員2名が死亡、10名が負傷した。定期保守作業のためのガスバルブの洗浄中にバルブ内の圧力が上昇してバルブが故障し、水素、メタン、一酸化炭素などを含むコークス炉ガスが漏洩して周囲に滞留し、何かの着火源で爆発した。爆発は2基のコークス炉バッテリーで1回起き、その後、複数のコークス炉バッテリーで圧力上昇による破裂が起きた。(コークス炉バッテリー:石炭からコークスを製造するために高温で石炭を焼く設備)
8月8日「化学工場で設備の停止作業中に塩素ガスが漏洩」愛媛県
愛媛県松山市の化学工場で、水酸化ナトリウム製造設備の停止作業中に塩素ガスが漏洩した。近くで作業していた従業員3人が塩素ガスを吸い、体調不良で病院に搬送されたが、いずれも軽症であった。会社の調べでは、電解設備の停止作業中に起きた機器の不具合が塩素ガス漏洩の原因の可能性があるとのこと。
8月7日「化学工場の三フッ化窒素製造設備で爆発、1人死亡」群馬県
群馬県渋川市の化学工場で爆発、火災が起きた。消防が約4時間後に鎮火したが、同工場建屋の一部が焼けた。従業員1人が死亡し、別の従業員1人が軽傷を負った。同設備では半導体製造に使用される三フッ化窒素を製造していた。
当該社のホームページによると「三フッ化窒素の純度を製品レベルにまで精製した後、製品容器に充填するために圧力を高める工程で、高圧で保持されるべき貯槽内の三フッ化窒素が規定外の手動バルブの開閉操作により、貯槽に付随する配管内へ流入した。その結果、低温・高圧の状態で配管内に流入した三フッ化窒素ガスが温度上昇により膨張し、支燃性の強い三フッ化窒素の高速な流れがバルブ内に発生した。これにより、バルブの樹脂部材が燃焼し、この燃焼が起点となり、爆発的に配管の破損に至った」とのことであった。
ひとこと:三フッ化窒素は支燃性ガスであり、2021年に山口県の製造施設で爆発が起きている。
8月4日「住宅設備機器の集塵機の火災」大阪府
大阪府大阪市の住宅設備機器を製造する工場の集塵機で発煙が起きたが、人的被害はなかった。
8月4日「花火大会で低空開発から台船の火災」神奈川県
神奈川県横浜市の花火大会で煙火玉の低空開発(低い位置で煙火玉が破裂すること)が起きた。他の煙火玉や機材に延焼して台船8隻中の2隻で火災が起きた。低空開発後に制御システムで打揚中止操作ができなくなり、打揚げが継続したため、消火活動は翌朝7時半頃から開始され、火災発生から約15時間半後に鎮火した。低空開発が起きた台船に乗っていた作業員5人は海に飛込み救助されたが1人が軽症の熱中症で病院に搬送された。
8月3日「化粧品原料工場で爆発、火災」韓国
韓国慶尚北道永川市の化粧品原料を製造する工場で爆発、火災が起きた。隣接する自動車部品工場の屋根や外壁が損傷した。従業員11人のうち1人が死亡し、1人が重傷、2人が軽傷を負った。有害なガスが発生したため、同工場の近隣住民など400人以上が避難した。同工場には、多量の過酸化水素や引火性液体、自己反応性物質が保管されていた。
8月2日「下水道管の点検作業中に硫化水素中毒 救助者が死亡」埼玉県
埼玉県行田市のマンホールで硫化水素中毒が発生し、4人が死亡した。地下約10mに埋設された直径約2.6mの下水道管の点検作業中にマンホール内のはしごを使用して下水道管内に降りようとしていた作業員1人が意識を失って転落し、助けに入った作業員3人も転落した。4人は心肺停止の状態で救助されたが、全員死亡した。死因は、2人は硫化水素中毒、別の2人は硫化水素中毒によって嘔吐した際の吐瀉物による窒息であった。作業開始時の硫化水素濃度は30ppmだったが、4人の転落後の濃度は150ppm以上であった。当日は市の委託を受けた土木工事会社の作業員10人以上で、下水道管の老朽化の点検作業をしていた。下水道管内には深さ約1.8mの汚水が溜まっており、汚泥などが堆積していたことで硫化水素が滞留していた可能性がある。事前の工事確認ではエアラインマスクを準備していたが、硫化水素の濃度に問題がなかったため使用しなかった。当日も同マスクを用意せずに業務を行っていた。作業員は転落に備える墜落制止用器具を装着していなかった。
ひとこと:酸欠や硫化水素中毒は工事作業に伴い発生することがあり、事前のリスク評価で可能性を把握し保護具の着装や常時監視者を置くことが望ましい。
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