10 月の化学火災(有害物中毒による死亡者の急増に注意)
災害情報センターのデータベース(http://www.adic.waseda.ac.jp/rise/ )ならびに、RISCAD(産業技術総合研究所が提供する事故データベース)のポータルサイト「さんぽのひろば」(hanpo.aist-riss.jp/sanponews/)の情報も参照し、海外の気になる事故を含めて、産業分野の火災や爆発、漏洩などの事例を紹介する。
10月31日「工場の焼入炉で火災」愛媛県
愛媛県松山市の農機具工場の焼入炉(幅3m、奥行約7m、高さ約3.5m)での火災。焼き入れ油の火災と思われる。
10月25日「廃炉作業での洗浄作業中に被曝 想定外の反応でガス発生」福島県
福島県双葉町の廃炉作業中の原子力発電所の多核種除去設備(ALPS)で、配管の洗浄作業中に被曝事故が起きた。作業員2名に廃液がかかって外部被曝し、除染と経過観察のため入院した。別の作業員2名が飛散した廃液の拭取作業の際に汚染され、除染を行った。汚染水が通る配管の洗浄に使用する硝酸水溶液と配管内にたまった炭酸塩が反応して通常よりガスが多く発生したため、廃液をタンクに流す仮設ホースが外れて廃液が飛散した。
ひとこと:炭酸塩は塩基性で硝酸との混合で二酸化炭素と熱を発生する。
10月25日「ドラム缶の溶断中に爆発」愛媛県
愛媛県八幡浜市の廃棄物処理施設で、従業員がガスバーナーでドラム缶の切断作業中に爆発が起き、作業者が死亡した。ドラム缶内に残留していた可燃性物が気化してガスバーなの火炎で着火したとみられる。
ひとこと:可燃物用容器のガス溶断では、内容物を除去しても可燃物が少量残存しており、溶断の熱で気化して爆発する事故は少なくない。ドラム缶などでは注水し、大型装置では内部に窒素を入れるなど、酸素を除去した後に解体をすることが必要である。
10月24日「廃棄物中のリチウムイオン電池による火災」千葉県
千葉県市川市の廃棄物処理施設で火災があり、ベルトコンベア等が焼損した。廃棄されたリチウムイオン電池から出火したものとみられる。
10月22日「おがくず製造工場の破砕機周辺で火災」長野県
長野県須坂市のきのこの栽培用のおがくずなどを製造する工場での火災。鎮火におよそ6時間を要した。粉砕機付近から出火した可能性。
10月21日「プラスチック廃材の火災」千葉県
千葉県臼井市のプラスチック加工会社の廃材置場で火災があり、廃プラスチックを焼損し、従業員1名が軽傷を負った。
10月20日「呼吸用保護具への窒素ボンベの誤接続で死亡」滋賀
滋賀県湖南市の樹脂加工工場で、防護マスクを酸素供給用管に繋げて装着して清掃作業を行う工程で、酸素供給用バルブに隣接された、窒素供給用バルブを防護マスクに接続したため酸欠となり死亡した。
ひとこと:呼吸用の酸素配管と窒素配管を並べて設置するのは、設備の本質安全化(フールプルーフ)の面から不適切である。また、呼吸用に酸素を長時間使用することは、高酸素症の恐れがあり空気配管とすべきである。
10月19「堆肥化施設で火災 蓄熱か」富山県
富山県朝日町の堆肥施設での火災。製品置場に設置された堆肥の詰込機付近から出火した。製品置場には堆肥が貯蔵されていた
ひとこと:堆肥化など発酵熱が発生する工程では、蓄熱による火災のリスクがあり、温度管理や消火設備が必要である。
10月17日「臨界事故施設解体中の火災」茨木県
茨木県東海村。臨界事故(1999年)後の解体中施設の放射線管理区域で火災があった。管理棟で放射性廃棄物を分別していた作業員が異臭を感じ、電源盤からの発煙とプラグの焦げ跡を見つけた。その後消防に通報し火災と認定された。放射性物質の漏えいはなかった。
10月16日「自動車部品工場の爆発 設備異常時に操業継続」愛知県
愛知県豊田市の自動車ばね製造工場の板バネの乾燥炉で爆発が起きた。2名が負傷し、工場の屋根が吹き飛んだ。事故による部品の提供が停止され、自動車工場の操業に大きな影響が出た。フィルタの目詰まりにより燃焼室内が高温になっていたが、燃焼を停止せず作業を続けたため未燃ガスが乾燥炉内に流入して、バーナの火で引火した。
再発防止に向け、設備が高温化したときなどの異常時には停止するルールを明確化した。
ひとこと:可燃性物質を多量に扱う石油精製や化学工場では、設備のトラブルや異常が発生時の現場の停止権限を文書化したり、停止することを叱責しないなどの風土が定着しつつある。
10月15日「清掃センターで破砕中に爆発」熊本県
熊本県天草市の清掃センターの粗大ごみ処理施設で爆発が起きた。機器の復旧には半年以上かかるため、不燃ごみと粗大ごみの一般持ち込みを制限することとなった。回転式破砕機での処理中に爆発し、一部が変形して使用不能になった。中身が残ったカセットボンベなどが混入した可能性がある。
10月10日「発電設備でボイラ配管が破裂」京都府
京都府宇治市の繊維工場内の発電設備のボイラ配管が、蒸気の圧力に耐えられずに破裂して水蒸気が噴出した。周辺の市民から爆発音の通報が相次いだ。
10月9日「食品工場でフライヤーから火災」兵庫県
兵庫県神戸市の食品工場のフライヤーから出火した。天井や天井裏などを焼き、約2時間半後に消し止められた。従業員100人は非難して、けが人はいなかった。
10月8日「製紙工場の抄紙機で火災」北海道
北海道苫小牧市の製紙工場で火災が発生し、3時間後に鎮火した。人的被害はなかった。新聞紙用抄紙機の乾燥工程で出火したが、当日は抄紙機は稼働していなかった。
ひとこと:抄紙機とは水に分散している紙の材料を、加熱しながら抄く(すく=水分を除いて紙とする)装置である。
10月6日「廃棄物処理施設での溶接作業中の火災」静岡県
静岡県富士宮市の廃棄物処理工場で爆発音の後、黒煙を伴う火災が発生し、工場を半焼した。溶断での解体作業の火花が、倉庫内の古紙や養生テープ、スプレー缶などに引火した可能性。解体作業をしていた同社の役員1名が死亡した。
10月5日「大学の実験室で火災」愛媛県
愛媛県松山市の大学研究室で火災が発生した。ドラフトチャンバー内に設置されていた縦横20cm、高さ約20cmのアルミニウム製の箱状の実験器具から出火した可能性。実験室は無人でけが人はなかった。
10月4日「研究所のアルコールランプからの火災」愛媛県
愛媛県伊予市の水産研究所で、職員がアルコールランプを使用して魚の組織標本の作成中に、アルコールランプが倒れて漏れたエタノールに着火した。作業中の職員が顔にやけどの重傷を負った。
10月4日「金属スクラップの火災」福岡県
福岡県福津市の産業廃棄物処理施設のスクラップ置場で、金属スクラップの火災が起き、激しい炎と黒煙が上がった。約11時間後に鎮火したが、保管中の金属スクラップが焼けた。
10月4日「バッテリーの試験中に火災」静岡県
静岡県沼津市の電力変換装置や電子機器などを開発、製造する工場で火災が発生した。瞬時電圧低下補償装置の試験中に、装置内のリチウムイオンキャパシターが発火し、作業員1名が顔と両手にやけどを負った。同社では装置の設計、製作上の過失が原因であると推定している。
10月3日 「食品加工工場でCO中毒、7人死亡」中国
中国山西省忻州市の食品加工工場で作業中の7人が相次いで倒れて死亡した。作業員1人が乾燥設備近くにある原料槽に入ったまま動かなくなり、助けに入った同僚6人も相次いで倒れた。同工場は主にトウモロコシを脱粒し、乾燥させていた。
ひとこと:CO中毒は死亡事故の多い労災だが、直近の厚生労働省の資料(2021年)では、業務上の疾病で死亡した労働者は1252人で、深刻なのは有害物中毒による死亡者の急増だという。金属・重金属中毒死が5人、有機化合物中毒死が13人、その他の化学物質中毒死が50人で、前年比それぞれ25%、44.4%、28.2%増加していた。
また、酸欠や硫化水素事故では救援者が被災する比率が高いことを教育する必要がある。
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