post_type:post/single.php

コラム(私の一言)

AGC(株)保安防災力向上プロジェクトの紹介(木谷裕一/AGC)

AGC株式会社 環境安全品質本部(EHSQ) 環境安全部
保安力向上センター 評価推進委員
木谷 裕一

弊社は2018年7月、創立110周年を迎えるに当たり、グローバルグループ一体経営をさらに進化させるために、グループ中核企業の旭硝子の商号を“AGC”に変更した。
そして昨年7月に、環境・安全・保安防災・品質への取り組みを加速するため、従来の本社組織を改編し、コーポレート部門に「環境安全品質本部(EHSQ)」を設立した。

AGCグループの「安全・保安防災」に関する近年の成績は、必ずしも良くない結果となっている。
この状況で、本年のEHSQマネジメントレビューで出されたCEOからのコメントは、具体的で明確である。

 「安全は事業の前提であり、投資である。事業戦略以前にやるべきことは、やらなくてはいけない。
  それが‘事業の前提’の意味するところである。」

環境安全品質本部では、トップの強い意志を受けて「安全・保安防災のレベル向上」を目標に、従来のやり方に捕らわれない新たな5つのプロジェクトを立ち上げ、グループ全体で活動をスタートさせている。
今回は、各事業の特徴、各製造拠点の違いを十分に考慮した上で、第3者の診断・指導を柱にした「保安防災力向上プロジェクト」をご紹介したい。

【事業別、拠点の規模別の取り組み】
製造拠点をCategoryに分類し、各拠点に対応した3つの第3者を選定していることが特徴である。
・保安力向上センター 「保安力評価」とこれに基づく改善計画の立案・実行
・新潟大学      「安全文化診断(慶大方式)」の共同研究契約締結
・地域消防       地域消防署のご指導による「自主防災力向上活動」
① Category-S 石災法特定事業所(1種・2種):日本国内対象
② Category-A 石災法特定事業所(2種)およびこれに相当する国内外の製造拠点
③ Category-B 中規模製造拠点(人員数 100名-500名程度)
④ Category-C 主として加工・組み立て型製造拠点(産業ガラス、自動車ガラス等)

【各Categoryの活動概要】
① Category-S/A
保安力評価では、各製造拠点(事業所、工場)診断だけでなく、本社各カンパニーの経営層(執行役員本部長クラス)の保安力向上センターによるインタビューも計画している。
目的は、本社経営層と各拠点の一貫性を確認することであり、経営層の関与の在り方を確認するものである。こういった確認は、社内でなく第3者による実施が有効と考えている。
② Category-A/B
新潟大学による「安全文化診断」の実施では全カンパニーが参画して、日本国内:21、アジア地区:28の拠点で予定しており、アンケート対象人数は現時点で28,000名を超える大規模な計画となっている。
弊社では、マネジメントシステムの導入、設備の機械的な安全対策に重点を置いた活動を行ってきたが、最近の事故・災害の実態から、「安全文化診断」が不可欠であると判断して採用を決定した。
③ Category-C
この活動の特徴は、拠点のある各地域の消防にご協力頂く活動という点である。
対象となる拠点は、住宅用サッシへのガラス加工・組み立て等、労働集約型の製造拠点である。
危険物、高圧ガス等のリスクはそれほど高くないが、近年みられる「大型倉庫火災」のようなリスクが高いと考え、主として「火災等の防止を目的とした自主防災力向上」を目指している。また、防災訓練は地域住民の皆さんと共同で実施する計画も検討している。実際の活動は北海道恵庭市の拠点で、恵庭消防署のご指導による活動がスタートしており、続いて佐賀県・鳥栖消防署にも活動にご協力頂くことで了解頂き、準備を進めている。

以上が、現在弊社で進めている「保安防災力向上プロジェクト」の概要である。
この活動のポイントは、これまで弊社ではあまり実施してこなかった保安力向上センターを始めとした第3者による診断であり、この結果をしっかりと確認して今後の改善計画・実行に活かすことが求められる。
さらに、今後の安全・保安防災活動は、保安力向上センター会員各社の皆様との「オープンな交流」も重要と考えてしており、ここに弊社の活動を紹介させて頂いた。
皆様の活動にも学びながら、継続的な改善活動を目指して進めて行きたいと考えている。

最後に、この機会をお借りして本活動にご協力頂いている保安力向上センターの皆様、慶應義塾大学・高野教授、新潟大学 東瀬准教授、恵庭消防署、鳥栖消防署の皆様、安全文化診断導入でご協力頂いた三井化学様にお礼すると共に、今後のさらなるご指導・ご鞭撻をお願い申し上げます。

保安力向上センター