6月の化学火災(フラッシュオーバーで拡大した倉庫火災)
災害情報センター(ADIC)のデータベース(http://www.adic.waseda.ac.jp/rise/ )ならびに、RISCAD(産業技術総合研究所が提供する事故データベース)のポータルサイト「さんぽのひろば」(hanpo.aist-riss.jp/sanponews/)の情報も参照し、海外の気になる事故を含めて、産業分野の火災や爆発、漏洩などの事例を紹介する。
6月30日「物流倉庫で工事中に火災 フラッシュオーバーで火災拡大」茨木県
茨木県阿見長の最新の食品物流(冷蔵冷凍)倉庫での火災が発生し、5日後に鎮火した。出火時、工場内部では断熱材の取付工事中であった。何かの原因で断熱材のウレタン製断熱材から出火後、フラッシュオーバーで建屋内に燃え広がったとされる。
ひとこと:フラッシュオーバーは火災により室内の可燃物が熱分解し、分解ガスに着火することによって一気に火災が拡大する現象。保冷倉庫などでは発泡ウレタンなどの可能性樹脂が内張りされており、フラッシュオーバーが起きやすい。バックドラフトとフラッシュオーバーはよく似た現象で混同されやすいが、前者は火災により内部で熱分解ガスが充満した後ドアの開放などで空気が供給されて、激しい燃焼が発生するものである。2007年米国で発生した倉庫火災では、バックドラフトで消防士9名が殉職した。国内でも消防士など消火作業中の方が火傷を負う例は少なくない。
6月30日「産業廃棄物処理施設で破砕機の火災」東京都
東京江東区の稼働中の産業廃棄物処理施設での火災。自動車などの廃棄物を粉砕する破砕機から出火し、多量の黒煙が発生して、廃材約900立方メートルとベルトコンベアを焼損した。
6月28日「大学工学部の実験室、高酸素濃度空気の使用で火災」岐阜県
岐阜県岐阜市の大学工学部で、ニクロム線を使用してプラスチックの着火実験を行っていたところ、酸素ボンベから供給する酸素濃度の設定を誤ったため、プラスチックが想定を超えた激しく燃焼し火災となった。
6月21日「木材加工会社で集じん機の火災」岩手県
岩手県奥州市の建築用木材を加工する工場建屋内にあった木屑用の集塵機から出火した。粉体が静電気により着火し、火災になったとみられる。従業員2名がやけどを負った。
6月18日「エチレングリコールを製造する化学工場で爆発」中国
中国上海市の中国の大手石油化学会社「シノペック」の子会社でエチレングリコールを製造する工場で製造装置が爆発し、火災となった。運送業者の運転手1名が死亡し、工場の作業員1名が軽傷を負った。消防隊員500人以上、消防車100台以上が出動して消火活動を進めた。
6月16日「農薬工場の汚水処理施設で爆発」中国
中国甘粛省蘭州市の農薬工場で爆発があった。600平方メートルの鉄骨造の汚水処理施設で爆発があった。高温、高圧の蒸気管が設置されており、従業員6名が死亡し、2名が重傷、6名が軽傷を負った。
6月14日「化学工場の物流拠点倉庫で火災」兵庫県
兵庫県三木市の有機、無機工業品を製造する化学工場の倉庫内で、爆発音があり火災となった。倉庫など計1000平方メートルが焼けた。敷地内には消防法危険物を扱う施設が複数あったが、延焼はなかった。周囲の住宅130戸が一時的に停電となった。出火時、人工甘味料の製造作業をしていたとのこと。
6月12日「リサイクル業者の倉庫で火災 高速道路が通行止め」愛知県
愛知県弥富町の廃棄物処理工場で、倉庫の解体作業中に何かの原因で出火し、倉庫が全焼して敷地内のプラスチックの廃材などが焼けた。この事故で、付近を通る東名自動車道が一時通行止めとなった。
6月4日「自動車整備工場の塗装ブースで火災」北海道
北海道札幌市の自動車整備工場の塗装ブースの乾燥エリアで火災が発生した。約20平方メートルと、換気ダクトの一部、車両1台などが焼けた。塗装で出る飛沫を吸引する装置か塗装乾燥用の窯から出火した可能性。
6月4日「化学工場で爆発 13人死亡」インド
インド北部のウッタル・プラデシュ州にある化学工場で爆発が起き、その後火災となった。工場内の何かの化学物質が爆発した可能性。現場から少量の火薬類が見つかったことから、工場では当局に届出ていた電子機器以外の製造を行っていた可能性が指摘されている。従業員13名が死亡、21名が重傷を負った。
6月4日「コンテナ集積地で過酸化水素などの爆発、火災 49人死亡」バングラディシュ
バングラディシュチッタゴン近郊の港から輸出入するコンテナの保管エリアで爆発火災が発生した。消防士9名や取材中のジャーナリストを含む49名が死亡、警察官10名を含む300名以上が負傷した。一部のコンテナに無届の過酸化水素などが入っていたため、被害が拡大した可能性。
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