2020年5月後半の化学火災
災害情報センター(ADIC)のデータベース(http://www.adic.waseda.ac.jp/rise/)とRISCAD(産業技術総合研究所が提供する事故データベース)のポータルサイト「さんぽのひろば」(https://sanpo.aist-riss.jp/sanponews/)の情報も参照し、産業分野の火災や爆発の事例を紹介する。なお、海外での重大事故や国内で類似火災の可能性がある例なども掲載する。
なお、RISCAD(リレーショナル化学災害データベース https://r2.aist-riss.jp/)は6月中旬から公開を再開している。
5月26日「中学校の実験中の火災」高知県
高知県安芸市の中学校で、理科の実験として硫黄と鉄をガスバーナーで加熱していたところ異臭が発生した。生徒5人が病院に搬送されたが、その後回復して学校に戻った。実験方法は教科書に記載されており、硫黄が発生するため、生徒はゴーグルとマスクを着用し教室の窓も開けていた。
ひとこと:中学2年生の理科の教科書には、鉄と硫黄の粉末を加熱して硫化鉄を生成させる実験が記載されているが、この実験の危険性についての記載は不十分であるように思われる。
5月26日「製油所定期修理中の火災」大分県
大分県大分市の製油所で火災が発生し、およそ8時間後に鎮火した。火災は定期修理のために運転停止中の常圧蒸留装置で発生し、他施設への延焼はなかった。
5月25日「食品工場の火災」埼玉県
埼玉県大里郡寄居町の惣菜製造工場で火災が発生し、工場の一部を半焼したが、人的被害や近隣への延焼はなかった。
ひとこと:食品工場では油分を含む原料を加熱する工程が多く、排気ダクト内にその油分が堆積し、調理の火の引火や油の酸化熱の蓄熱による火災が少なくない。排気ダクトの定期的な清掃やガス検知器の設置などが望ましい。
5月25日「清掃工場で火災」青森県
青森県青森市の市清掃工場から出火した。この火災で職員が病院に搬送されたが、けがはなかった。出火したのは、敷地内にある破砕選別処理施設で、今年1月と今月7日にも火災があった。
5月23日「機械工場の試運転中の爆発」兵庫県
兵庫県明石市のエンジンやタービン、産業用ロボット等を製造する工場の発電設備の試運転時に小規模の爆発があり、設備の一部が破損したが、けが人はなかった。
5月22日「金属加工工場の火災」広島県
広島県福山市の金属加工工場から出火、木造平屋約80平方メートルを全焼した。出火当時工場は無人であった。
5月19日「化学工場の火災」韓国
韓国忠清南道瑞山の工業団の化学工場で火災が発生し、1人が死亡、2人が火傷を負った。
火災は触媒センター内の触媒包装室で発生した。作業終了後、撤収する際にパウダーが噴出し、自然発火して火災が発生したものと推定された。触媒は粉体で自然発火や粉塵爆発の可能性もあるが、原因については調査中。
この工場では2020年1月にも、触媒開発施設で配管の清掃作業中に爆発が起きていた。
5月17日「製紙工場の火災」静岡県
静岡県富士宮市の製紙会社の工場から出火し、紙を切断する機械などを焼いた。出火当時、工場は稼働中だった
5月15日「金属加工工場での火災」三重県
三重県桑名市の軸受等を製造する工場で火災が発生し、鉄骨スレート葺き平屋建て工場建屋、製造ラインの一部を焼いた。けが人はなかった。高温の製品が落下して可燃性堆積物に引火した。通常は自動で製品を油冷却する工程であるが、機器の不具合のため手動で操作していたという。約1時間で鎮火した。
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