2019年9月後半の化学事故・・・海外で様々な化学火災が発生
RISCAD(産業技術総合研究所が提供する事故データベース)のポータルサイト「さんぽのひろば」(https://sanpo.aist-riss.jp/sanponews/)との連携により提供された情報を中心に、産業分野の火災や爆発の事例を紹介する。
また、過去の事故の教訓について、センター研究員の経験からの(ひとこと)も紹介する。
9月16日「生物学研究所で改装工事中にガス爆発、火災」ロシア
ロシアのシベリア地方のバイオセーフティレベル4の実験施設で火災が発生した。炭疽菌、天然痘ウイルス、エボラ出血熱ウイルスなどの試料を保管していたが、火災のあった衛生検査室にはウイルスなどは保管されていなかった。同室は改修工事中で、何かの原因で室内にあったガスボンベから漏洩したガスに着火し、職員1名が負傷した。
9月16日「パルプ工場で火災」長野県
長野県松本市の製紙工場で、原料の古紙が燃えていると通報があった。敷地内に積まれていた段ボール紙約90トンが燃えた。
9月17日「アルキルアルミニウムの漏洩発火」大分県
大分県大分市の樹脂原料を製造する工場で、プラスチック原料の製造用のアルキルアルミニウムを容器からタンクに移す際に、破損した配管から漏洩して発火した。アルキルアルミニウムは放水消火ができないため消火活動は難航し、粉末状の消火剤や砂などを使用して約31時間後に鎮火した
(ひとこと)2013年にはアルキルアルミニウム(トリメチルアルミニウム)コンテナの交換時、内容物が接続配管のフランジから漏洩し発火した。この事故では作業手順の不遵守や連携不足による誤ったバルブ操作やフランジ開放が漏洩の原因となり、以下のような再発防止策が提案された。
①マニュアル遵守、変更管理の重要性の教育
②know-whyを含めた手順書の整備
③作業における関係者間の情報共有
④頻度の低い、非定常作業における安全管理の徹底
9月26日「化学工場の火災で有害物が放散」フランス
フランス北部ルーアンの化学工場で火災が発生した。火災によるけが人は出ていないが、刺激臭のある黒煙が周辺の22キロ圏内に広がった。地元のルーアンのスタジオとオフィスで一部の従業員が吐き気と嘔吐を起こし、全員が退避した。地元担当局は「消火活動を行っているが、消火水で貯水池があふれた場合、セーヌ川に汚染物質が流出するリスクがある」と述べた。
9月28日「二輪車部品工場の火災」愛知県
愛知県大府市の自動二輪車用製造工場の、自動運転中の部品製造工程で火災が発生した。
9月29日「樹脂工場での爆発、火災」中国
浙江省寧海県の工場で火災が発生し、19名が死亡し、3名が負傷した。工場では樹脂製品や芳香剤などを製造しており、製品開発のための実験設備も保有していた。
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