「バイオマス発電の火災危険性」 (若倉正英)
低炭素社会の実現に向けて、バイオマス発電等に様々な公的補助金の仕組みが整備されている。国の方針を受けて、バイオマス発電施設の建設が進み、国内電力の4.3%(475万kW 2021年)を占めるまでになっている。大型のバイオマス発電所は海外から輸入される木質ペレットが主原料で、小型バイオマス発電では、し尿や林地残材などの地域資源の利用が多い。
一方、バイオマス発電施設では木質チップの移送、貯蔵での火災や爆発が世界的に増加しており、自然エネルギーの活用が進むヨーロッパや木質チップの供給国であるカナダなどで、木質チップの火災リスクへの危惧が高まっており、火災危険性に関する研究や事故情報の共有が進んでいる。
バイオマス火災の研究者として知られるカナダトロント大学のSally Krigstin教授は、木質チップの蓄熱火災や粉じん爆発、オフガスや粉じんによる酸欠や健康被害のリスクに関して、粉じん爆発、健康被害は対策が明確になり、事業者の意識が高まったことから減少傾向にあるとしている。しかし、蓄熱による火災は2025年度以降も増加すると予測している。理由として発熱から発火に至る挙動が複雑で、発熱因子が木質チップの組成や取扱い状況(気温や湿度、保管期間、取扱量など)により変動すること、施設が年々大型化していることをあげている。
新たな技術の進展では、新たな事故リスクが生じる可能性が高いが、バイオマス発電では取り扱う原料が安全法規上の規制対象となっていないことから、建設時のリスク評価が十分とは言えないことが多い。特に、施設の大型化は蓄熱リスクに直接関係することから、最近の火災と密接に結びついている。
複数の企業が出資した米子市バイオマス発電施設では、建設時から火災、爆発事故が連続して、住民の不安が大きくなったことから、鳥取県はバイオマス発電所の安全対策を強化するよう、総務省消防庁と経済産業省に要望したとのことである。
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