7月の化学火災(混触事故が複数発生)
災害情報センターのデータベース(http://www.adic.waseda.ac.jp/rise/ )ならびに、RISCAD(産業技術総合研究所が提供する事故データベース)のポータルサイト「さんぽのひろば」(hanpo.aist-riss.jp/sanponews/)の情報も参照し、海外の気になる事故を含めて、
産業分野の火災や爆発、漏洩などの事例を紹介する。
7月31日「リサイクル会社の産業廃棄物置場で火災」埼玉県
埼玉県川越市のリサイクル会社の産業廃棄物置場で火災が起き、堆積されていた金属スクラップが焼けた。廃棄されたエアコンや電化製品、バッテリなどが置かれており、従業員が重機を使用してこれらの分別中に、何かの原因で出火した。
7月30日「樹脂原料工場で可燃性液体が漏洩」愛知県
愛知県名古屋市の樹脂原料製造工場で可燃性ポリオールが漏洩したが、その後回収された。火災危険性があったため、消防車18台が出動した。
ひとこと:ポリオールは主としてポリウレタンの製造原料で、、ポリエーテルポリオール、ポリマーポリオールおよびポリエステルポリオールがある。そのほとんどが消防法の危険物(第4類)に該当する。
7月30日「筆製造工場の危険物貯蔵庫でセルロイドの火災」広島
広島県熊野町の筆製造工場の危険物貯蔵庫で火災が起きた。筆の柄の原料のセルロイドなどが保管されていた貯蔵庫1棟が全焼し、隣接する倉庫の一部と車庫、車両2台が焼けた。けが人はなかった。
ひとこと:ニトロセルロースを原料とするセルロイドは燃えやすく、粉末や薄膜の状態などでは劣化により自然発火することが知られている。過去にはセルロイド製の映画フィルムで多くの悲惨な火事が起きている。例を紹介する。
1943年3月 北海道倶知安で映画を上映中にフィルムから火災が発生し、観客209名が死亡した。
1951年5月 北海道道東の浜中町の映画館で映画フィルムの発火による火災があり。子供37人、大人5人が死亡した。
1951年7月 札幌の路線バスで運転席後部に積まれていた映画フィルムが発火し、観客を火煙が包み、12名が死亡した。
1984年9月 東京の古い映画フィルムを所蔵するフィルムセンターで、フィルムの自然発火で火災となり、大量の貴重な映画フィルムを焼損した。この事故を契機にフィルムの「不燃化」への取り組みが加速されたと言われている。
7月30日「製油所の硫黄貯蔵タンクで火災」北海道
北海道苫小牧市の製油所の硫黄貯蔵タンクで火災が起きた。約1時間後に消火を確認した。けが人はなかった。製油所は2024年6月10日まで定期修繕中であった。
7月29日「ドイツの化学工場で爆発、火災」
ドイツ・ルートヴィヒスハーフェンのドイツ最大の化学会社で爆発、火災が起きた。同工場の自衛消防隊や地域消防が消火したが、消防士7名を含む18名が軽傷を負った。環境モニタリングの結果、周辺の大気の炭化水素濃度がわずかに上昇したことが確認された。
7月28日「大学の研究室でヘキサンとメタノールによる火災」大阪府
大阪府大阪市の大学で、実験機器清掃中にヘキサンとメタノールの発火が起きた。清掃をしていた学生2名が顔や腕にやけどで軽傷を負った。軽傷を負った学生2名は、グローブボックス内の清掃をしており、洗浄剤にヘキサンとメタノールを使用していた。ヘキサンで拭取り後、メタノールで拭取り、その後乾燥を早めるためヒートガンで加熱したことで、ヘキサンとメタノールの蒸気に着火した可能性。
7月26日「アルミニウム加工工場で爆発」中国
中国河南省のアルミニウム加工工場で装置の故障により爆発が起きた。5名が死亡し、14名が負傷した。同工場内のアルミニウム棒晶析装置の故障が原因の可能性がある。
7月21日「プラスチック製品製造会社で火災」大阪府
大阪府大阪市のプラスチック製品製造会社の工場から出火した。隣接する会社など3棟にも燃え広がり、計延べ約610平方メートルを焼いた。
7月19日「バイオマス発電所で爆発」北海道
北海道石狩市のバイオマス発電所で、燃料の木質ペレットの搬入中に爆発が起き、建屋の屋根の一部が吹飛んだ。車両の誘導を行なっていた従業員1名が手や足にやけどを負た。車両2台が木質ペレットを地下の貯留槽に搬入中に、爆発が起きた。
粉じん爆発の可能性。
3日後の22日にも、同じ発電所のバイオチップ貯槽で発煙があった。
7月16日「車両製造工場で火災」長野県
長野県埴科郡のショベルカー等を製造する工場で火災が発生した。塗装エリアの乾燥設備から出火し、消火活動にあたった4人が煙を吸い込み、病院で処置を受けた。
ひとこと:自動車等の塗装では酸化重合型塗料が使用され、未硬化の塗料かすが塗装ブースのフィルターに付着して蓄熱火災を生じさせることがある。また、溶剤であるシンナーへの着火のリスクもある。
7月15日「リサイクル資材置場で金属スクラップの火災」山梨
山梨県笛吹市の金属スクラップ置場で火災が起きた。約34時間後に鎮火したが、金属スクラップが焼けた。置場には空調機や給湯器などの家電の金属スクラップが積まれており、雨で濡れた家電から出火した可能性がある。
7月13日「化学工場の配管からトリクロロエチレンが漏洩」岐阜県
岐阜県神戸町の化学工場のト屋外配管からトリクロロエチレン約10Lが漏洩した。高さ約5mの配管から下方の土壌に漏洩した。約5Lは回収され、基準値を超える濃度のトリクロロエチレンが含まれる土壌を撤去した。地下水や排水のトリクロロエチレン濃度が基準値以下であることを確認した。トリクロロエチレンは人工皮の洗浄用で、配管の溶接部が腐食したことでできたピンホールからが漏洩した可能性。
7月12日「工場で設備の補修中に塩酸が飛散して被液」兵庫県
兵庫県伊丹市の自動車用ブレーキ製造工場で設備の補修中に塩酸が漏洩した。従業員3名が塩酸を浴び、皮膚の痛みなどで病院に搬送された。メッキ加工設備と塩酸タンクをつなぐ金属製のホースの補修作業中で、ホースと塩酸タンクの接合部が外れて塩酸が漏洩し、飛散した。3名は防護服を着用していたが、防護服の隙間から塩酸が入って付着した。
7月11日「製鉄所の高炉で一酸化炭素中毒」北海道
北海道室蘭市の製鉄所の高炉の熱風炉付近で。一酸化炭素中毒が起きた。作業員1名が倒れ、その後死亡が確認された。
7月11日「化学工場で作業中にフェノールが漏洩し被液」山口県
山口県宇部市の化学工場の2階で計器入替作業中にフェノールが漏洩した。作業中の社員2名がフェノールを浴びて腕や足にやけどを負い、 3階で別の作業をしていた協力会社従業員5名がフェノールを吸い、計7名が病院を受診した。工場外部への影響はなかった。受傷した社員がフェノールを蒸発させる装置の計器入替作業をしていた際に、何かの原因でフェノールが漏洩した。
7月11日「水産加工会社で薬剤の誤混合で塩素ガスが発生」北海道
北海道函館市の水産加工会社のホタテの洗浄液を作る装置で、薬剤の誤混合により塩素ガスが発生した。職員4名が軽症となった。
7月11日「中学校で理科の実験中に硫化水素発生」岩手県
岩手県宮古市の中学校の理科の実験中に体調不良が起きた。授業を受けていた生徒約60名のうち複数の生徒に頭痛と吐き気の症状があり、5名が病院に搬送されたが、いずれも軽症であった。鉄と硫黄を反応させて硫化鉄を生成する実験中に、窓を開けて扇風機を回して換気換気をしていたが、硫化水素が発生した可能性がある。
7月10日「機器製造の塗装ラインでの火災」茨木県
茨城県土浦市の電気機器メーカーの工場で火災が発生した。火災は油圧ショベルのブームやアームを塗装する工程で発生した。
7月5日「化学工場で誤混合による火災」大阪府
大阪府大阪市の化学工場で火災が起きた。ゴムの添加剤製造のため水素化ナトリウムを含む薬品混合中に約50cmの火炎と熱風が発生し、作業をしていた作業員1名が顔にやけどを負って病院に搬送された。ゴムの劣化防止用の添加剤の製造のため水素化ナトリウムの混合中に誤って水を混合した可能性。
ひとこと:水素化ナトリウムは水に触れると自然発火や水素を発生する。水素化ナトリウムを取り扱い中に作業者の汗と反応して発火し、トルエン蒸気に引火、火災となった例もある。
7月2日「製油所の潤滑油製造装置で火災」千葉県
千葉県市原市の製油所の潤滑油製造装置で火災が起きた。潤滑油の精製作業中に、何かの原因で出火した可能性。
保安力向上センター