令和3年度 保安力向上センターの会長就任ご挨拶
2022年6月20日
保安力向上センター
会長 松尾 英喜
このたび、創設より会長を務めていただきました伊藤東さんの後任として第二代の会長に就任いたしました。ご挨拶を兼ね製造業の保安の課題と保安力向上センターの役割についてご紹介させていただきます。 |
1.会長就任の挨拶
このたび、創設より会長を務めていただきました伊藤東さんの後任として第二代の会長に就任いたしました。ご挨拶を兼ね製造業の保安の課題と保安力向上センターの役割についてご紹介させていただきます。
保安力向上センターは保安力評価を通じて各社の安全基盤や安全文化レベルの評価を行い、安全レベル向上につながる取り組みを支援しています。しかし今、製造現場を取り巻く環境は大きく変化しています。先ずDXの推進があります。AIやICT技術は現場にも導入され始めており、今後さらに急速に拡大していくでしょう。またカーボンニュートラルやサーキュラーエコノミーの対応なくして産業の生き残りは厳しくなるでしょう。人口減少や、働き方改革、定年延長など働く環境も変化しております。近年は自然災害も激甚化しています。安全を支える安全基盤や安全文化にもこれらの環境変化は影響を与えると考えなくてはなりません。これらの環境の変化に応じて適切なものに変えていく取り組みを継続していく必要があります。また近年技術伝承が十分に行われず保安力の低下が懸念される事例も見られています。このように現場の保安の課題は新旧様々で対応は決して容易ではありません。産官学が連携して課題と将来に向けた取り組みを共有化して取り組んでいく必要があります。保安力向上センターはその相談や支援、連携のパイプ役として貢献してまいります。お気軽にご相談して頂きたいと思います。
2.保安力向上センターの目的と設立経緯
20世紀末から21世紀初頭にかけて化学産業での世界的な重大事故多発を踏まえ、“技術面”に加え“意識面(安全文化)”の重要性が指摘され、日本でも対応が検討された。
(1)経済産業省は『安全文化の醸成によるプロセス産業の自主的な安全活動』の在り方を安全工学会に検討依頼(2006年)。
(2)安全工学会は『保安力評価法』を答申(2011年)、更に企業での実用化を図るため『保安力評価システム』を確立(2013年)。
(3)大手化学企業18社の支援を得て、安全工学会内に「保安力向上センター」を創設し、『保安力評価システム』を活用する企業の自主的な安全活動支援を開始(2013年)。
(4)5年間の活動実績を踏まえ、「特定非営利活動法人 保安力向上センター」として独立し(2018年6月)、『保安力評価を通して、産業界の安全に貢献する』を目的とする体制を整備。
3.活動概況
『保安力評価システム』(知財登録済)は「安全基盤」と「安全文化」より成り、約150項目の5段階評価にて保安力評価を行い、自社の“強み”と“弱み”を把握し、安全レベルの継続的な向上を図るものである。
(1)団体会員の48社(正会員25社、賛助会員23社)は、「保安力評価システム」を活用し、保安力レベル向上の自主的な活動を行っている。
(2)保安力向上センターは依頼により、各社の現場に出向いて保安力評価を実施している。これは「センター評価」と呼ばれ、「第三者評価」として位置付けられている。
(3)参画する全社の評価結果を統計的に集計して会員に提供し、各社が自社活動の評価レベルを項目別に他社と比較することを可能にしている。
(4)正会員企業の「保安力評価推進委員」は自社の活動推進を図ると共に、各社推進委員との定期的な会議にて相互に経験交流を行い自社活動の更なる向上に活用している。
4.活動実績(センター評価実績数;センター基準)
2019年 | 28工場 | |
2020年 | 14工場 | コロナ禍の影響もあり、評価減 |
2021年 | 23工場 | リモート方式の評価を会員会社のご協力を得て開始 |
2022年 | 25工場(見込み) |
5.今後の展開
保安力向上センターの活動が評価され、化学産業主体に参加企業が増加しているが、今後はより広い産業分野等への適応拡大を進めて行くと共に、安全活動の人材育成にも努める。
(1)化学・石油産業から鉄鋼分野に活用が拡大しているが、材料加工等にも広げる。
また、大企業だけでなく中小企業でも活用可能な評価システムを準備すると共に、必要によりコンサルティング機能も確保する。
(2)全社的な保安力向上には“現場”だけでなく、“経営層”、“管理層”の関与も重要である。経営層や管理層に参考となる「安全資料」の準備や、現場安全活動の「中核的人材の育成」にも努力する。
(3)「保安力評価システム」の改善継続と「評価者の育成」を図り、保安力評価法による自主的な保安力向上活動の普及を行う(含、海外)。
(4)産業界(日化協、石化協、石連等)、経産省、各大学及び海外機関(フランス安全文化研究所等)と連携し、幅広い社会安全(含、安全教育)に寄与する活動にも参画する。
安全は産業界だけでなく社会生活全般でも重要性が認識され始めている。「絶対安全は無い」や「自分の安全は自分で守る」等の“安全原則”も提起されている。安全は“技術や規則”の整備に加え、人の“安全意識”も重要であり、『安全は技術×意識 (Skill×Mind』 にて達成される。
皆様が「保安力向上センター」の活動に参画され、産業安全の確保のみならず、社会安全まで安全意識の視野を広げて頂ければ幸甚です。